任意後見を考えるとき、「結局、いくらかかるのか」は大きな関心事です。任意後見の費用は、「契約するとき」「始めるとき」「始まった後」の3つの場面に分かれます。場面ごとに、誰にいくら払うのかを整理しておくと、見通しが立てやすくなります。今回は、それぞれの費用の目安を整理します。なお、金額は2026年10月時点で公表されている情報に基づく目安で、個別の事情によって変わる場合があります。
費用がかかる3つの場面
| 場面 | 主な費用 | 払う相手 |
|---|---|---|
| ① 契約するとき | 公正証書の作成手数料、登記の費用、専門家への報酬 | 公証役場・法務局・専門家 |
| ② 始めるとき(家庭裁判所への申立て) | 申立ての費用、診断書の費用、書類の取得費用 | 家庭裁判所・医療機関・役所など |
| ③ 始まった後 | 任意後見監督人の報酬、任意後見人の報酬、実費 | 監督人・任意後見人など |

① 契約するときにかかる費用
任意後見契約は、公証役場で公正証書により結びます。日本公証人連合会の案内によると、主な費用は次のとおりです。
- 公正証書の作成手数料:1契約につき13,000円。証書の枚数が3枚を超える場合は、超える1枚ごとに300円が加算されます
- 登記嘱託手数料:1,600円
- 登記のための収入印紙代:2,600円
- 郵送料:実費
これらを合計すると、おおむね17,200円に、枚数による加算と郵送料が加わります。公証人が自宅や病院に出張する場合は、日当や交通費などが加算されます。
また、見守り契約や財産管理等委任契約、死後事務委任契約を同時に結ぶ場合は、それぞれ別に手数料がかかります。
このほか、契約書の原案作成を専門家に依頼する場合は、専門家への報酬が必要です。報酬の額は事務所によって異なるため、依頼の前に、見積りの内訳を確認してください。
② 任意後見を始めるときにかかる費用
任意後見を始めるには、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。主な費用は次のとおりです。
- 申立手数料:収入印紙800円
- 登記手数料:収入印紙1,400円
- 郵便切手:金額は裁判所ごとに異なります
- 診断書の作成費用:医療機関によって異なります
- 戸籍や登記事項証明書などの取得費用
- 鑑定費用:本人の精神状態について鑑定が必要になった場合のみ。事案によって異なります
申立書類の作成を司法書士に依頼する場合は、その報酬も別に必要です。
③ 始まった後にかかる費用
任意後見が始まった後は、継続的な費用がかかります。ここが、全体の費用を考えるうえで、いちばん大切な部分です。
- 任意後見監督人の報酬:家庭裁判所が決めます。大阪家庭裁判所が公表している報酬のめやすでは、管理する財産が5,000万円以下の場合は月額1万円〜2万円、5,000万円を超える場合は月額2万5,000円〜3万円とされています。特別な労力を要した場合は、付加報酬が認められることもあります。報酬は本人の財産から支払われます
- 任意後見人の報酬:契約で決めます。家族が任意後見人になる場合は、無報酬とすることもあります。専門家や法人に頼む場合は、月額の報酬を定めるのが一般的です。報酬を定める場合は、金額・支払いの時期・実費の扱いを契約書に明記します
- 実費:交通費、通信費、証明書の取得費用など。本人の財産から支払います
任意後見監督人の報酬は、任意後見が続く限り、本人が亡くなるまで毎月かかります。たとえば月額1万円〜2万円の場合、年額では12万円〜24万円になります。この金額は、契約時には決められないため、将来の費用として織り込んでおく必要があります。

契約を結んでも、始まらなければかからない費用
将来型の任意後見契約は、任意後見が始まらない限り、「① 契約するときの費用」だけで済みます。任意後見監督人の報酬や、任意後見人の報酬は、任意後見が始まってからかかる費用だからです。
一方で、移行型は、財産管理等委任契約が動き始めた時点で、受任者への報酬が発生する場合があります。見守り契約も、見守りをする人への報酬が、契約に定めた時期から発生します。どの契約で、いつから、いくらかかるのかを、契約前に確認しておくことが大切です。
費用を見通すための工夫
- 報酬を契約書に明記する:任意後見人や、見守りをする人の報酬は、金額と支払い方法を書面で確認します
- 見積りの内訳を確認する:契約書の作成費用、公証役場の手数料、実費が、それぞれいくらなのかを分けて確認します
- 将来の継続的な費用も試算する:任意後見監督人の報酬や、任意後見人の報酬が、本人の財産から無理なく支払えるかを考えます
- 助成制度を確認する:成年後見制度に関する費用の助成制度を設けている市区町村もありますが、対象になる費用や条件は自治体によって異なります。お住まいの市区町村の窓口に確認してください
よくあるご相談の例
例えば、一人暮らしで、将来、家族に負担をかけたくないと考えている方が、任意後見契約を結ぼうとしたとします。「契約のときの費用だけで済むと思っていた」というご相談はよくあります。しかし、実際に任意後見が始まると、任意後見監督人の報酬が、毎月、本人の財産から支払われます。また、専門家に任意後見人を頼む場合は、その報酬も別にかかります。契約の前に、「始まった後」の費用まで含めて、本人の財産で無理なく賄えるかを確認しておくと、安心です。
よくある質問
Q. 任意後見契約を結ぶだけなら、費用はどのくらいですか?
A. 公証役場の手数料と登記の費用で、おおむね17,200円程度です(枚数による加算や郵送料は別です)。専門家に契約書の作成を依頼する場合は、その報酬が別にかかります。
Q. 任意後見監督人の報酬は、誰が払うのですか?
A. 本人の財産から支払います。金額は、家庭裁判所が、本人の財産や監督の事務の内容を踏まえて決めます。契約で定めることはできません。
Q. 任意後見監督人の報酬は、払わずにすむ方法はありますか?
A. 任意後見は、任意後見監督人が選任されて、はじめて始まる制度です。監督人の報酬だけを払わずにすませることはできません。
Q. 法定後見(後見・保佐・補助)より、費用は安いですか?
A. 一概には言えません。任意後見は、任意後見人の報酬を契約で決められる(家族が無報酬の場合もある)という特徴があります。一方で、監督人の報酬は、別にかかります。ご自身の財産や、誰に頼むかによって、総額は変わります。
せと行政書士事務所ができること
任意後見契約書の原案作成と、公証役場との調整をサポートします。費用については、契約の前に、契約時・始めるとき・始まった後の費用の見通しを、できるだけ具体的にお伝えします。申立書類の作成が必要になった場合は司法書士、申立ての代理は弁護士と連携して対応します。
まとめ
任意後見の費用は、「契約するとき」「始めるとき」「始まった後」の3つの場面に分けて考えると、整理しやすくなります。契約時の費用は、公証役場の手数料などで、おおむね2万円弱です。本当に大切なのは、始まった後に継続してかかる、任意後見監督人の報酬や任意後見人の報酬です。契約を結ぶ前に、始まった後の費用まで含めて、見通しを立てておきましょう。
参考:日本公証人連合会「公正証書作成手数料」/ 大阪家庭裁判所「任意後見制度」
費用の見通しを、契約の前に具体的にお伝えします
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執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・FP1級技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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