遺産分割協議は、原則として、相続人全員で行う必要があります。1人でも欠けた状態で、まとめた協議は、原則として、無効になります。では、相続人の中に、未成年の方や、認知症の方、連絡の取れない方が、いたらどうなるのでしょうか。

この記事では、それぞれの場合の、進め方と、注意点を、整理します。

この記事は、2026年10月現在の制度にもとづいた、一般的な内容です。2026年6月24日に、成年後見制度の見直しを含む、民法等の改正法が公布されましたが、2026年10月現在、施行はこれからです。この記事では、現行の制度で説明しています。

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まず、全体の整理

相続人の状況必要な対応
未成年の方がいる原則として、親権者が、代理します。利益相反がある場合は、特別代理人の選任が必要です
認知症などの方がいる判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助などを、検討します
行方不明の方がいる所在調査を行い、必要に応じて、不在者財産管理人の選任などを、検討します

状況によっては、家庭裁判所での手続きが、必要になります。必要な制度や手続きは、それぞれの事情によって異なります。家庭裁判所に提出する書類の作成は、司法書士や弁護士の業務です。

相続人に、未成年の方がいる場合

18歳未満の方は、1人で、遺産分割協議に参加することが、できません。通常は、親権者(親)が、法定代理人として、本人に代わって、協議に参加します。

ところが、親も、同じ相続の相続人である場合(例えば、父親が亡くなり、母親と、未成年の子が、相続人の場合)、母親と子の利益が、対立する関係になります。このような場合は、母親が、子の代理人になることは、できません。

家庭裁判所に、特別代理人の選任を、申し立てて、子のために、協議に参加する人を、選んでもらう必要があります。

  • 特別代理人の候補者:親族(叔父や叔母など)や、専門家が、なることが多いです。相続人ではない人を、選びます
  • 子が、複数いる場合:同じ親権者のもとにある、未成年の子が、複数、相続人となる場合、子ども同士も、利益相反の関係になります。親権者も、相続人である場合は、原則として、それぞれの子に、特別代理人が必要です。一方、親権者が、相続人でない場合は、親権者が、一方の子を代理し、もう一方の子に、特別代理人を選任する方法もあります
  • 申立ての際の、注意:特別代理人の選任の申立てでは、遺産分割協議の内容(案)を、示すことが、一般的です。内容が、子に不利にならないことが、求められます

相続人に、認知症の方がいる場合

認知症などで、判断能力が低下している場合でも、直ちに、遺産分割協議が、できなくなるわけではありません。大切なのは、診断名ではなく、本人が、協議の内容を理解し、自分の意思で、判断できるかどうかです。

協議を進める前に、医師の診断を受けることも、有効ですが、医師の診断だけで、法律上の意思能力の有無が、自動的に確定するわけではありません。

遺産分割について、必要な判断能力がない場合には、家庭裁判所での、成年後見制度の利用を、検討します。

現行の制度には、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つがあり、成年後見人などが、本人を代理する場合があります。保佐人や補助人が、遺産分割協議を代理する場合は、そのための代理権の付与が、必要です。

  • 手続きには、時間がかかります。申立てから、成年後見人などが、選任されるまでに、一定の期間が、かかります
  • 後見は、遺産分割が終わっても、続きます。現行の成年後見制度では、遺産分割という目的が、達成されても、それだけで、成年後見を終了することは、できません。原則として、本人が亡くなるか、判断能力が回復するまで、続きます。ただし、2026年に、制度の見直しを含む改正法が、公布されており、今後、仕組みが変わる予定です
  • 本人の利益が、守られる内容にする必要があります。成年後見人は、本人の利益を守る立場のため、通常は、本人の法定相続分を、確保する内容で、協議します
  • 後見人も、相続人の場合:成年後見人と本人が、同じ相続の相続人になる場合は、利益相反が生じます。この場合、原則として、家庭裁判所に、特別代理人の選任を、申し立てる必要があります。ただし、成年後見監督人が、選任されている場合は、監督人が、本人を代理するため、特別代理人の選任は、不要です。なお、保佐・補助の場合には、状況に応じて、臨時保佐人・臨時補助人という仕組みがあります
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相続人に、行方不明の方がいる場合

相続人の1人と、連絡が取れない場合は、次の順で、進めます。

  • 1. 所在を調べる。戸籍の附票などから、現在の住所を調べ、手紙などで、連絡を試みます。住所が分かれば、そこに、連絡できます。住所が判明していて、単に、返事がないだけの場合は、直ちに、不在者財産管理人の選任の対象になるわけではありません。協議ができない場合は、遺産分割調停などを、検討します
  • 2. それでも、所在が分からない場合。家庭裁判所に、不在者財産管理人の選任を、申し立てる方法があります。選任された管理人が、行方不明の相続人に代わって、遺産分割協議に参加するには、原則として、家庭裁判所の「権限外行為許可」を得る必要があります
  • 3. 長期間、生死が分からない場合。原則として、7年間、生死が不明な場合は、家庭裁判所に、失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、法律上、一定の時点で、死亡したものとみなされます。ただし、死亡したものとみなされる時期によって、相続人の範囲が、変わる場合があります。代襲相続や、数次相続などが、関係することもあるため、慎重に確認する必要があります

所在を調べる段階では、戸籍の収集や、住所の調査が、必要になります。この部分は、当事務所でも、サポートできます。

そのほか、手続きに注意が必要なケース

  • 相続人が、海外に住んでいる:日本に住民登録がない方は、通常、日本の印鑑証明書を、取得できません。そのため、日本国籍の方は、在外公館で発行される、署名証明(サイン証明)などを、利用します。外国籍の方は、現地の公証人による、署名認証などが、必要になる場合があります。手続きに、時間がかかるため、早めに、取りかかります
  • 相続人が、多数いる、または、面識がない:連絡や、書類のやり取りに、時間がかかります。まず、戸籍で、相続人を確定し、連絡の準備を、進めます

よくあるご相談の例(仮の例)

例えば、父親が亡くなり、相続人が、母親と、小学生の子2人だったとします。母親は、「家族で、仲良く分けるつもりだから、自分が、子どもたちの代わりに、協議書に、署名すればよい」と、考えていました。

しかし、母親も相続人であるため、子どもたちの代理人には、なれません。子ども1人につき、1人ずつ、特別代理人を、家庭裁判所に、選んでもらう必要がありました。母親は、親族に、特別代理人を、引き受けてもらい、協議を進めました。

(これは、よくあるご相談を踏まえた仮の例です。実在の特定の方の話ではありません。)

よくある質問

Q. 未成年の子どもが、1人だけ相続人の場合も、特別代理人は必要ですか?

A. 親(親権者)が、相続人でない場合は、親が、法定代理人として、協議に参加できます。親が、同じ相続の相続人である場合は、原則として、特別代理人が必要です。

Q. 認知症の疑いがありますが、診断は、受けていません。どうすればよいですか?

A. まず、本人が、協議の内容を理解し、判断できるかどうかを、確認することが、大切です。医師の診断を受けることも、判断の材料になりますが、診断だけで、法律上の能力が、確定するわけではありません。

判断能力が、不十分な場合は、成年後見制度の利用を、検討します。

Q. 行方不明の方を、除いて、協議を進めてもよいですか?

A. 相続人の1人でも欠けた協議は、原則として、無効です。除いて、進めることは、できません。

せと行政書士事務所ができること

当事務所は、相続人の確定のための、戸籍の収集や、所在調査のための、戸籍の附票の取得、相続関係の整理を、サポートします。また、紛争性のない事案で、相続人の合意内容にもとづく、遺産分割協議書の原案の作成も、承ります。

特別代理人、成年後見人、不在者財産管理人の選任の、申立書の作成は、司法書士や弁護士の業務、裁判所での代理や、相続人どうしの紛争対応は、弁護士の業務となります。

必要に応じて、ご了承をいただいたうえで、各専門家と連携して、ご案内します。

まとめ

遺産分割協議は、原則として、相続人全員で行う必要があります。相続人に、未成年者がいる場合は、通常、親権者が代理しますが、親権者も、相続人であるなど、利益相反が生じる場合には、特別代理人の選任が必要です。

認知症の方がいる場合は、まず、遺産分割の内容を理解し、判断できる能力があるかを、確認します。判断能力が不足している場合は、成年後見制度の利用を、検討します。

また、行方不明の相続人がいる場合は、所在を調べたうえで、必要に応じて、不在者財産管理人の選任などを、検討します。いずれの場合も、状況によって、必要な対応が異なり、家庭裁判所での手続きが、必要になることもあります。

手続きに、時間がかかる場合があるため、早めに、状況を整理し、必要に応じて、専門家に、相談することが大切です。次回は、遺産分割がまとまらないときの、進め方について、解説します。

こんな方は、自己判断で進める前に、ご相談ください

  • 相続人に、未成年の方がいる方
  • 相続人の判断能力に、不安がある方
  • 連絡の取れない相続人がいる方

相続人の中に、手続きが難しい方がいる場合は、初回30分無料でご相談ください

初回相談は30分無料です。
お電話・フォーム・LINEから、お気軽にご相談ください。

受付時間 9:00〜17:00(日祝を除く)/大阪市北区西天満(大阪メトロ南森町駅から徒歩5分)

せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之
瀬戸 孝之(せと行政書士事務所 代表)
行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士。銀行・不動産・保険の業界を経て、実務25年。
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執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士)

投稿者プロフィール

瀬戸 孝之
瀬戸 孝之資産トータルアドバイザー
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。