相続の手続きは、「誰が相続人なのか」を確定することから始まります。そのために必要なのが、戸籍謄本です。
ところが、戸籍は、結婚や、本籍地を移す転籍、法律の改正にともなう作り直し(改製)などによって、複数に分かれていることがあります。
本籍地が変わっている場合は、それぞれの市区町村に保管された戸籍を、たどる必要があり、「どこで、どの戸籍を取ればよいのか」と、戸惑う方も少なくありません。なお、引っ越しで住所が変わっても、本籍地は、自動的には変わりません。
この記事では、必要な戸籍の範囲と、集め方、そして、2024年3月から始まった、広域交付制度でできること、できないことを、整理します。
この記事は、2026年10月現在の制度にもとづいた、一般的な内容です。手数料や、必要書類は、役所や、提出先によって異なる場合があります。

なぜ、戸籍が必要なのか
戸籍は、相続人が誰かを、確認するための、いちばんの証拠です。預貯金の解約や、不動産の相続登記などでは、「亡くなった方の、出生から死亡までの戸籍」と、「相続人全員の戸籍」を、提出するよう、求められます。
見つかっていない相続人がいると、遺産分割協議が、やり直しになることもあります。そのため、相続手続きの、最初の段階で、戸籍を集めて、相続人を確定します。
どの戸籍が必要か
- 亡くなった方の、出生から死亡までの、連続した戸籍:現在の戸籍だけでなく、過去の戸籍(除籍謄本や、改製原戸籍謄本)も、必要です。途中で、本籍を移していたり、戸籍が作り直されていたりすると、複数の役所の戸籍を、たどることになります
- 相続人全員の、現在の戸籍:相続人が、いまも生きていることと、相続人であることを確認するために、必要です。亡くなった日より後に、取得したものを、求められることが、一般的です
相続人の構成によって、さらに必要になる戸籍があります。
| 相続人の構成 | 追加で必要になる戸籍の目安 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 亡くなった方の、出生から死亡までの戸籍と、配偶者・子の現在の戸籍が、中心です |
| 子がいない(親や祖父母が相続人) | 亡くなった方の戸籍に加えて、親や祖父母が、いまも生きていることが、分かる戸籍が必要です |
| 子や親がおらず、兄弟姉妹が相続人になる | 亡くなった方の、出生から死亡までの戸籍に加えて、父母それぞれの、出生から死亡までの戸籍や、祖父母などの直系尊属が、亡くなっていることを確認できる戸籍などが、必要です。また、兄弟姉妹が、亡くなった方より先に死亡している場合は、その子である、甥・姪が、代襲相続人になることがあります。その場合は、亡くなった兄弟姉妹の、出生から死亡までの戸籍や、甥・姪の戸籍も、必要です |
| 子が先に亡くなっている | 亡くなった子の戸籍に加えて、その子(孫)の戸籍が、必要になることがあります |
提出先によって、求められる書類が異なる場合があります。事前に、確認しておくと、安心です。
戸籍の集め方:3つの方法
| 方法 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 本籍地ごとに、請求する | 戸籍が置かれていた、市区町村に、窓口または郵送で請求します。郵送の場合は、手数料を、定額小為替で支払うのが、一般的です | 時間に余裕があり、本籍地が、数か所に限られる方 |
| 広域交付制度を使う | 本籍地以外の、最寄りの市区町村の窓口で、まとめて請求できます(後で説明します) | 平日に、窓口へ行ける方で、請求できる範囲に、当てはまる方 |
| 専門家に依頼する | 行政書士などが、職務上請求という方法で、戸籍を取得します | 平日に動けない方、本籍地が遠方・多数の方、戸籍が複雑な方 |
広域交付制度とは
2024年3月1日から始まった、広域交付制度は、本籍地が、遠方の役所にあっても、お近くの市区町村の窓口で、戸籍証明書や、除籍謄本などを、まとめて請求できる制度です。
これまでのように、本籍地ごとに、郵送で請求する手間を、減らせます。
できること
- 本籍地が複数に分かれている場合でも、1か所の窓口で、まとめて請求できます
- 戸籍謄本のほか、除籍謄本、改製原戸籍謄本も、請求できます(戸籍の状態によって、取得できない場合があります)
- 相続のとき、亡くなった方の戸籍を、請求できます(請求できる人は、下記の範囲です)
できないこと・注意点
- 請求できる人が、限られます。本人、配偶者、父母・祖父母などの直系尊属、子・孫などの直系卑属です。兄弟姉妹や、おじ・おば、甥・姪の戸籍は、その関係だけでは、請求できません。兄弟姉妹が相続人の場合は、注意が必要です。ただし、自分の父母の戸籍など、直系親族の戸籍であれば、広域交付を利用できる場合があります。広域交付で取得できない戸籍は、本籍地の市区町村へ、請求する必要があります
- 代理人や郵送では、請求できません。請求する本人が、市区町村の窓口へ、出向く必要があります。その際、顔写真付きの、本人確認書類が必要です
- 対象外のものもあります。戸籍抄本(個人事項証明書)、戸籍の一部事項証明書、戸籍の附票、住民票などは、戸籍証明書の広域交付制度の、対象外です。また、コンピュータ化されていない一部の古い戸籍も、取得できません。なお、住民票については、別の広域交付制度が設けられています
- その場で、受け取れないことがあります。特に、出生から死亡までの戸籍を、まとめて請求する場合は、ほかの市区町村への確認などに、時間がかかり、後日の受け取りになることがあります。時間に余裕を持って、手続きしましょう
- 手数料がかかります。一般的な手数料は、戸籍謄本(全部事項証明書)が1通450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本が、それぞれ1通750円です(2026年10月現在。市区町村の案内で、ご確認ください)
戸籍を集めるときの注意点
- 死亡の記載のある戸籍から、さかのぼる。亡くなった方の、最後の戸籍から、順に、過去の戸籍をたどると、確実です
- 古い戸籍は、読みにくいことがあります。手書きの戸籍や、旧字体、略字が、使われていることがあり、読み取りに、時間がかかります
- 思いがけない相続人が、見つかることもあります。前の婚姻で生まれた子や、認知した子が、いる場合があります。戸籍を集める過程で、初めて分かることもあります
- 戸籍の発行日に、注意しましょう。戸籍謄本そのものに、法律で一律に定められた有効期限はありません。ただし、金融機関や裁判所などの提出先によっては、「発行から3か月以内」などの条件が付く場合があります。特に、相続人の現在の戸籍については、提出先の条件を確認しましょう

よくあるご相談の例(仮の例)
例えば、父親が亡くなり、長男が、戸籍を集めようとしたとします。調べてみると、父親の本籍は、結婚前は、地方の実家、結婚後は、大阪市内、その後に、転籍して、現在の本籍地、と、3か所に、分かれていました。
それぞれの役所へ、郵送で請求すると、時間がかかります。長男は、母親(配偶者)と相談し、広域交付制度を使って、お近くの役所の窓口で、まとめて請求しました。
ただし、古い戸籍が一部、取得できなかったため、その分は、本籍地へ、別に請求しました。(これは、よくあるご相談を踏まえた仮の例です。実在の特定の方の話ではありません。)
よくある質問
Q. 兄弟姉妹が相続人の場合も、広域交付制度は使えますか?
A. 兄弟姉妹の戸籍は、兄弟姉妹という関係だけでは、広域交付で請求できません。ただし、自分の父母の戸籍など、直系親族の戸籍であれば、広域交付を利用できる場合があります。
取得できない戸籍は、本籍地の市区町村へ請求するか、専門家に依頼する方法があります。
Q. 代理人に頼んで、広域交付で、戸籍を取れますか?
A. 広域交付制度は、請求する本人が、窓口に出向く必要があり、代理人による請求は、できません。行政書士などの、職務上請求は、別の仕組みで行います。
Q. 戸籍は、何通くらい、必要になりますか?
A. 相続人の構成や、本籍の移り変わりによって、大きく異なります。数通で済むこともあれば、十数通以上になることもあります。
せと行政書士事務所ができること
当事務所は、相続人調査のために、行政書士の職務上請求で、戸籍謄本などを、収集できます(ご依頼の範囲での取得です)。戸籍を読み解いて、相続人を確定し、相続人関係図を作成することも、できます。
戸籍を集めたあとは、そのまま、遺産分割協議書の作成や、預貯金の名義変更などの手続きに、お進みいただけます。
相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人どうしの争いは弁護士の業務のため、必要が生じたときは、ご了承をいただいたうえで、連携してご案内します。
まとめ
相続人を確定するためには、亡くなった方の、出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍を、集めることが基本です。
本籍地が複数に分かれている場合は、広域交付制度が便利ですが、請求できる人や、取得できる戸籍の範囲には、制限があります。また、請求する本人が、窓口へ出向く必要があります。
兄弟姉妹が相続人となる場合や、戸籍が複雑な場合は、必要な戸籍が多くなることがあります。ご自身で収集することが難しい場合は、行政書士などの専門家に、依頼することもできます。
次回は、集めた戸籍をもとに作成する、法定相続情報一覧図について、解説します。
こんな方は、自己判断で進める前に、ご相談ください
- 本籍地が遠方・複数で、戸籍集めが進まない方
- 兄弟姉妹が相続人で、必要な戸籍が分からない方
- 平日に、役所へ行く時間が取れない方
戸籍の収集や、相続人の確定は、初回30分無料でご相談ください
初回相談は30分無料です。
お電話・フォーム・LINEから、お気軽にご相談ください。
受付時間 9:00〜17:00(日祝を除く)/大阪市北区西天満(大阪メトロ南森町駅から徒歩5分)
執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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