家族信託は、いずれ終了する日を迎えます。多くの場合、委託者(親)の死亡が終了のきっかけとして定められています(「亡くなった後も次の人のために続ける」という設計にすることもできます)。信託が終了した後、財産がどうなるのかを事前に理解しておくことが、契約時の安心にもつながります。
信託が終わったら、残った財産は「帰属権利者」に渡る
信託契約では、終了後に残った財産を受け取る人を「帰属権利者」としてあらかじめ定めておきます。多くの場合、受益者の相続人や、特定の子どもが指定されます。この点は、遺言と似た機能を持っています。

帰属先を定めていなかった場合
契約書に帰属権利者の定めがない場合、原則として、財産は委託者(または委託者の相続人)に戻る扱いになります。たとえば「長男に引き継ぐつもりだった自宅」でも、定めがなければ相続人全員の共有のような状態になりやすく、あらためて話し合いが必要になるなど、想定と異なる結果になりかねません。帰属先は必ず契約時に明確にしておくことをおすすめします。
終了時に必要になる手続き
信託が終了すると、それまでの受託者が「清算受託者」として、信託を終わらせるための手続きを担当します(契約で別の人を定めていれば、その人が担当します)。主な手続きは次のとおりです。
- 不動産の名義変更(受託者から帰属権利者へ)。登記の手続きは司法書士が行います
- 信託口口座に残ったお金の清算・分配と、口座の解約など金融機関での手続き
- 信託のお金の出入りをまとめた最終的な計算書を作成し、受益者や帰属権利者に確認してもらう。承認を受けることで、不正などがない限り、受託者の責任も一区切りとなります

よくあるご相談の例
「契約時には専門家から終了時の手続きの説明を受けていたが、年数が経つうちに忘れてしまい、父が亡くなったとき、受託者だった長男は『まずは相続の手続きを進めなければ』と考えて、信託を終わらせる手続き(名義変更や最終的な計算書の作成)が別に必要なことに気づかず、数ヶ月そのままになってしまった」というご相談がありました。信託が終了しても、名義変更や口座の清算といった手続きは自動的には完了せず、清算受託者が実際に動く必要があります。手続きが止まっている間、不動産の管理や固定資産税の支払いなど、日常的な対応にも支障が出ていたとのことでした。
税金面で気をつけること
信託が終わって財産を受け取る場合、受け取り方によって税金の種類が変わります。たとえば、委託者が亡くなったことをきっかけに信託が終了し、帰属権利者が財産を受け取る場合は、多くの場合、相続や遺贈で取得したものとして相続税の対象になります。一方、委託者の生前に信託が終了して、委託者以外の人が財産を受け取る場合は、贈与として贈与税の対象になることがあります。さらに、名義変更の際には、帰属先によって登録免許税や不動産取得税がかかる場合もあります。相続税の申告には「亡くなったことを知った日の翌日から10か月」という期限があるため、信託終了の手続きも、この期限を意識して進めることが大切です。誰が、どのタイミングで、どの財産を受け取るかによって扱いが変わるため、税理士への確認が欠かせません。
遺された家族が困らないための備え
信託契約書に帰属先や清算の流れを書いておくだけでなく、「誰が清算受託者として動くのか」を家族全員が把握しておくことも大切です。契約書が金庫の中にしまわれたまま、その存在すら家族に伝わっていないと、いざという時に手続きが止まってしまいます。契約書の保管場所と、困ったときに相談する専門家の連絡先を、家族で共有しておくと安心です。
よくある質問
Q. 信託が終了したら、自動的に手続きが完了しますか?
A. いいえ、名義変更や清算などの手続きを清算受託者が行う必要があります。何もしなければ自動的には完了しません。
Q. 帰属権利者は途中で変更できますか?
A. 契約で「委託者が変更できる」と定めておけば、委託者の判断で変更できます。定めがない場合は関係者の合意が必要になるなど、手続きが重くなります。変更の可能性がある場合は、契約時にその方法も決めておきましょう。
Q. 信託終了後の手続きは、どのくらいの期間で終わりますか?
A. 財産の内容や名義変更に必要な書類の準備状況によって異なりますが、不動産が含まれる場合は数ヶ月程度かかることもあります。早めに専門家に相談し、必要な手続きを整理しておくとスムーズです。
Q. 清算受託者は、最初の受託者と別の人でもいいですか?
A. 契約であらかじめ指定しておけば可能です。清算の実務は専門的な内容を含むため、司法書士や税理士などのサポートを受けながら進める方法もあります。
せと行政書士事務所ができること
契約時点から、終了後の帰属先や清算の流れを見据えた設計を行い、実際の終了時には、司法書士・税理士など必要な専門家と連携しながら、手続きの整理をサポートします。
まとめ
家族信託は、終了後の財産の行き先まで決めておくことで、遺言と同じような役割も果たします。契約時に帰属権利者を明確に定め、終了時に必要な手続きと、誰が担当するのかも把握しておきましょう。
執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・FP1級技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
最新の投稿
代表コラム2026年10月6日家族信託が終わったら、財産はどうなるのか
代表コラム2026年10月5日信託した不動産を売却するときの実務上の注意点
代表コラム2026年10月4日家族信託は節税になる?よくある誤解を整理する
代表コラム2026年10月3日受託者の負担は?帳簿・報告義務という現実

