家族信託では、多くの場合、子どものうち1人が「受託者」として財産管理を担うことになります。財産管理の実務上は自然な選択であっても、受託者に選ばれなかったきょうだいとの間で、思わぬすれ違いが生まれることがあります。契約書の中身以上に、家族の関係性への配慮が問われる場面です。
起きやすいすれ違い
- 受託者だけが親の財産状況を把握しており、他のきょうだいには見えにくくなる。悪意がなくても「情報を独占している」と受け取られてしまうことがあります
- 「なぜ自分ではなく弟(妹)が選ばれたのか」という感情的なわだかまりが残る
- 受託者の判断に対して、後から「勝手に決めた」と不満が出ることがある
- 受託者自身も「本当にこれでいいのか」と、1人で判断する重さを感じてしまう。財産管理は責任が重く、精神的な負担になることもあります

感情的な対立が、将来的な法的リスクにつながることも
きょうだい間のすれ違いは、感情的な問題だけでは終わらないことがあります。信託の設計によって、特定の子どもに財産が多く承継されるような内容になっていると、他のきょうだいが「自分の取り分が不当に少ない」と感じ、将来、委託者が亡くなった際に「遺留分侵害額請求」という法的な請求に発展するケースもあります。遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことで、信託を使っても完全には排除できません。感情的なわだかまりを放置しておくと、こうした法的トラブルの引き金にもなりかねないため、設計段階から遺留分への配慮もあわせて検討しておくことが大切です。
よくあるご相談の例
「長男が受託者になったのですが、遠方に住む妹から『どうして自分に相談がなかったのか』と言われてしまい、関係がぎくしゃくしています」というご相談を受けたことがあります。契約自体には問題がなくても、決定に至るまでの過程を共有できていなかったことが、感情的なしこりにつながっていました。後から信託監督人として妹にも関わってもらう形に契約を見直し、少しずつ関係も落ち着いていったそうです。
すれ違いを防ぐための工夫
受託者を1人に決めること自体は自然なことですが、その理由や役割を、契約前にきょうだい全員で共有しておくことが重要です。
- 受託者を選んだ理由(近くに住んでいる、財産管理に慣れているなど)を家族で話し合っておく
- 信託監督人を置き、受託者以外の立場から財産管理を確認できる仕組みを作る
- 定期的に、財産の状況をきょうだい間で共有する場を設ける。年に1回程度でも、集まって状況を報告し合う機会を持つと安心感が違います

信託監督人とは、受託者の職務が適正に行われているかを確認する第三者的な立場です。専門家や、受託者以外のきょうだいを信託監督人に指定することで、受託者の負担も軽減され、家族全体の安心にもつながります。
よくある質問
Q. 受託者以外のきょうだいにも財産状況を開示する義務はありますか?
A. 受託者には受益者に対する報告義務がありますが、受益者以外のきょうだいに対する開示義務は契約内容によります。あらかじめ契約に「受益者以外への定期報告」を盛り込んでおく方法もあります。
Q. 信託監督人は誰でもなれますか?
A. 未成年者や成年被後見人などを除き、基本的には誰でもなれますが、受託者の職務を客観的に確認できる立場であることが望ましいため、専門家に依頼するケースも多くあります。
Q. きょうだい全員が納得してから契約を進めるべきですか?
A. 法律上は、きょうだい全員の同意がなくても契約は可能です。ただし、後々の関係性を考えると、決定の経緯だけでも共有しておくことをおすすめしています。
Q. 契約後にすれ違いが起きてしまったら、どうすればいいですか?
A. 信託監督人の追加や、報告の仕組みの見直しなど、契約内容を後から調整できる場合があります。気になる状況が出てきたら、早めに専門家へ相談してみてください。
せと行政書士事務所ができること
受託者の選び方や役割分担について、きょうだい間の関係性や遺留分への配慮も踏まえながら、後々のすれ違いが起きにくい設計を一緒に考えます。
まとめ
家族信託は、財産管理の仕組みであると同時に、家族間の関係にも影響を与えます。受託者を決める理由を家族で共有し、信託監督人や遺留分への配慮などの仕組みも活用しながら、全員が納得できる形を目指しましょう。
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執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・FP1級技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
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せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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