家族信託の契約書は、インターネット上にある雛形をそのまま使うのではなく、ご家庭の状況に合わせて条項を作り込むことが重要です。同じ「家族信託」という名前でも、契約書の中身次第で実務上の使い勝手は大きく変わります。ここでは、特に実務で重要になる5つの条項を紹介します。
①後継受託者に関する条項
最初の受託者が、死亡や後見開始の審判を受けた場合など、職務を続けられなくなった場合に備え、次の受託者(後継受託者)をあらかじめ定めておく条項です。これがないと、信託の継続自体が難しくなるおそれがあります。詳しくは別記事「後継受託者を決めていますか?」でも解説しています。

②受託者の権限の範囲に関する条項
不動産の売却や、大規模修繕の判断など、受託者がどこまで単独で決められるかを明確にしておきます。範囲が曖昧だと、いざという時に判断が止まってしまうことがあります。特に不動産の処分に関する権限は、金融機関や買主から契約書の記載を細かく確認されることが多いため、具体的な文言で定めておくことが実務上のポイントになります。
③信託監督人・受益者代理人に関する条項
信託監督人と受益者代理人は、似ているようで役割が異なります。信託監督人は、受託者の職務を第三者的な立場から確認・監督する役割で、受益者自身の判断能力に関わらず置くことができます。一方、受益者代理人は、受益者に代わってその権利を行使する役割で、受益者代理人が選任されると、原則として受益者本人は自ら権利を行使できなくなります(ただし、信託法92条に列挙された一定の重要な権利(例:信託帳簿等の閲覧請求権や、受託者の任務違反による損失てん補請求権など)については、受益者代理人が選任されていても、受益者本人が引き続き行使できます)。受益者の判断能力が将来低下することを見据えるなら受益者代理人、受託者の職務を客観的にチェックする目を確保したいなら信託監督人、というように、目的に応じて使い分けることが大切です。信託監督人を置くかどうかは、受託者が1人のきょうだいだけの場合に、実務上検討されることが多いポイントです。

④信託の変更・終了に関する条項
どのような場合に信託を変更・終了できるか、終了後に財産をどこに帰属させるかを具体的に定めます。誰の合意が必要かをあらかじめ明記しておくことで、後から状況が変わった際にもスムーズに対応できます。ただし、変更方法について契約書に独自の定めを設けると、かえって法律上認められている他の変更方法を制限してしまう場合があるため、規定の仕方には注意が必要です。
⑤帳簿作成・報告に関する条項
受託者には、法律上もともと帳簿等の作成・保存義務や、受益者への報告義務が課されています。契約書に頻度や方法を具体的に定めておくことで、この法律上の義務を実務で運用しやすい形にできます。なお、受益者への報告義務は、契約の定めによって軽減したり、免除したりすることも可能です。報告の頻度を「年1回」など具体的に決めておくと、受託者自身も見通しを持って対応しやすくなります。
よくあるご相談の例
「知人から譲り受けた契約書のひな形をもとに、自分たちで信託契約を作ろうとしたが、受託者の権限の範囲が曖昧で、いざ不動産を売却しようとした際に手続きが進められなかった」というご相談がありました。契約書自体は形式として整っていても、実務で必要な条項が抜けていたために、機能しない契約になっていた例です。結局、契約書を作り直すことになり、当初想定していたよりも時間も費用も余計にかかってしまいました。
よくある質問
Q. 雛形の契約書ではダメですか?
A. 一般的な内容は網羅できますが、ご家庭ごとの財産状況や家族関係に合わせた調整がないと、実務上使いにくい契約になることがあります。
Q. 条項が多いほど良い契約書と言えますか?
A. 必要な条項が漏れなく入っていることが重要で、単に条項数が多ければよいわけではありません。実務で機能するかどうかの視点で確認することが大切です。
Q. 契約書は自分たちだけで作成してもいいですか?
A. 法律上は可能ですが、専門的な知識が必要な部分が多く、内容に不備があると実務で機能しない契約になるリスクがあります。実務上は、証拠力や信用性の観点から公正証書で作成することが推奨されており、専門家を交えて作成することをおすすめします。
Q. すでにある契約書に、後から条項を追加することはできますか?
A. 変更条項の定め方によりますが、関係者の合意があれば追加や修正ができる場合があります。今の契約書に不安がある場合は、一度専門家に確認してもらうことをおすすめします。
せと行政書士事務所ができること
ご家庭の財産状況や家族構成をふまえ、実務で機能する契約書になるよう、必要な条項を一つずつ確認しながら作成します。
まとめ
家族信託の契約書は、後継受託者・権限範囲・監督の仕組み・変更終了・報告義務という5つの視点で内容を確認しておくことが、実務で機能する信託への近道です。
執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・FP1級技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
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せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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