前回は、亡くなった直後の、最初の2週間にやることを整理しました。今回は、そのあとに続く、相続手続きの全体の流れと、期限を、地図のように整理します。

相続の手続きには、期限が3か月、4か月、10か月、3年と、バラバラに設定されたものがあり、「何を、いつまでに」が、分かりにくいのが、悩ましいところです。全体像を先に知っておくと、慌てずに、順番に進めやすくなります。

この記事は、2026年10月現在の制度にもとづいた、一般的な内容です。2026年6月24日に、遺言制度や成年後見制度の見直しを含む民法等の改正法が公布されましたが、この記事で扱う手続きの期限は、現行の制度で説明しています。

印鑑と書類、住宅の模型のイメージ

相続手続きの全体像(主な9つの手続き)

ステップやること時期の目安主な担当
1. 死亡直後の届出死亡届、年金・健康保険などの手続き7日〜14日以内ご家族
2. 遺言書の有無の確認自宅、公証役場、法務局などで、遺言書を確認します早めにご家族、行政書士
3. 相続人の調査戸籍謄本を集めて、相続人を確定します早めに(数週間〜数か月かかることもあります)ご家族、行政書士
4. 相続財産の調査預貯金、不動産、株式、保険、借金などの、全体を洗い出します早めに(相続人の調査と、並行して進めます)ご家族、行政書士など
5. 相続放棄・限定承認の判断借金が多い場合などに、検討します3か月以内相続人が家庭裁判所へ申述(弁護士などへ相談)
6. 準確定申告亡くなった方に、申告が必要な所得があった場合4か月以内税理士
7. 遺産分割協議相続人全員で、分け方を決めて、協議書にまとめます期限はありません(相続税の申告までが目安)相続人全員(協議書の作成は、行政書士など)
8. 名義変更・解約預貯金、不動産、株式などの手続き(生命保険金は、受取人が、保険会社に請求します)預貯金などは期限なし。相続登記は3年以内行政書士、司法書士
9. 相続税の申告・納付必要な場合のみ10か月以内税理士

これらは、必ずしも、1番から9番まで、順番に終えるものではありません。相続人の調査と、財産の調査は、並行して進めます。

また、遺産分割が終わらなくても、相続放棄の3か月や、準確定申告の4か月、相続税の申告の10か月といった期限は、原則として、延びません。期限のある手続きを、優先して進めることが大切です。

期限のある手続き:起算点に注意

期限は、「亡くなった日」からではなく、「相続の開始を知った日」などから数える手続きが、多くあります。起算点が異なる点に、ご注意ください。

期限手続き起算点・ポイント
3か月以内相続放棄・限定承認自分のために相続の開始があったことを知った時から数えます。財産や借金の調査が終わらず、判断できないときは、3か月の期間内に、家庭裁判所へ、期間の伸長を申し立てることができます(必ず認められるわけではありません)。なお、限定承認は、原則として、相続人全員が、共同して行う必要があります
4か月以内準確定申告亡くなった方に、申告が必要な所得があった場合です。相続の開始を知った日の翌日から数えます
10か月以内相続税の申告・納付相続の開始があったことを知った日の翌日から数えます(通常は、亡くなった日の翌日から)。申告が必要な場合のみです
3年以内相続登記自分が相続人になったことと、不動産を取得したことを知った日から数えます。遺産分割で取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内の登記も必要です
1年以内遺留分侵害額の請求相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から、1年間行使しないと、時効により消滅します。また、相続開始から10年を過ぎた場合も、請求できなくなります

生命保険金の請求権は、保険法により、原則として、権利を行使できる時から3年間で、時効となります。ただし、具体的な起算点や、時効が過ぎたあとの取扱いは、契約内容や事情によって異なることがあります。

保険証券などを確認して、早めに保険会社へ請求しましょう。

相続税の申告が必要かどうか、目安を知る

相続税には、基礎控除があります。基礎控除の額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。例えば、法定相続人が3人の場合は、4,800万円です。

相続財産(不動産、預貯金、株式、生命保険金の一部など)の合計が、基礎控除の額以下であれば、原則として、相続税の申告は不要です。

ただし、小規模宅地等の特例や、配偶者の税額軽減などの特例を使うと、税額がゼロになる場合でも、これらの特例を使うためには、申告が必要です。基礎控除を超えるかどうかの判断は、財産の評価が必要なため、税理士にご相談ください。

なお、基礎控除の計算では、相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして、法定相続人の数に含めます。

また、一定の生前贈与財産や、死亡保険金なども、相続税の計算に関係するため、財産の総額だけでなく、税法上の取扱いを、確認する必要があります。

相続税申告書と印鑑のイメージ

遺産分割がまとまらないまま、期限が近づいたら

遺産分割協議そのものに、一律の期限はありません。ただし、相続開始から10年を経過すると、原則として、生前贈与などの特別受益や、寄与分を考慮した遺産分割を、求めることができなくなります。

例外もありますが、長期間放置せず、早めに話し合いを進めることが大切です。

また、遺産分割が、相続税の申告期限までにまとまらない場合でも、原則として、期限内に、申告・納税する必要があります。未分割の財産は、原則として、法定相続分などに従って、取得したものとして計算します。

配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例は、未分割の財産について、当初の申告時には、原則として、適用できません。

ただし、相続税の申告書に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割が成立した場合には、一定の要件のもとで、特例を適用できます。

税額が減る場合は、分割が成立した日の翌日から4か月以内に、更正の請求を行います。なお、3年以内に分割できない場合でも、訴訟など、やむを得ない事情があるときは、所定の手続きを経て、特例を受けられる場合があります。

具体的な進め方は、早めに、税理士にご相談ください。

相続登記についても、遺産分割がまとまらず、期限までに登記が難しい場合は、「相続人申告登記」という制度を利用できます。

自分が相続人であることなどを、法務局に申し出ることで、相続登記の基本的な申請義務を、履行したものと扱われます。ただし、この手続きでは、不動産の名義が変更されるわけではありません。

その後、遺産分割が成立した場合には、成立した日から3年以内に、分割の内容を反映した相続登記が、別途、必要です。

なお、2024年4月1日より前に発生した相続についても、相続登記の義務化の対象となります。

以前から、相続による不動産の取得を知っていた場合は、原則として、2027年3月31日が期限となるため、未登記の不動産がないか、確認しましょう。

期限に追われないための、優先順位

  • まず、財産とマイナスの財産を、早めに調べる。相続放棄の判断は、3か月以内のため、借金の有無を、早めに確認します
  • 戸籍謄本を、早めに集める。相続人の確定には、時間がかかることがあり、以降の、すべての手続きの土台になります
  • 相続税がかかりそうなら、早めに税理士に相談する。10か月は、思ったより短いです
  • 遺産分割は、相続税の申告期限を、意識して進める。特例が使えるかどうかに、関わります

よくあるご相談の例(仮の例)

例えば、母親が亡くなり、長女が、相続の手続きを進めることになったとします。ところが、母親の財産が、銀行、不動産、保険など、あちこちに分かれていて、全体像が分からないまま、2か月が過ぎてしまった、というご相談です。

借金があるかどうかも分からず、3か月が近づく中で、相続放棄をするか迷っています。こうしたときは、財産の調査を急ぎつつ、間に合わなければ、期間の伸長の申立てを検討するなど、順番に整理していくことが、大切です。

(これは、よくあるご相談を踏まえた仮の例です。実在の特定の方の話ではありません。)

よくある質問

Q. 3か月を過ぎたら、相続放棄はできませんか?

A. 原則として、3か月を過ぎると、相続放棄はできなくなります。ただし、相続財産が、全くないと信じていたなど、事情によっては、認められることもあります。確実ではないため、期限内に、判断することが大切です。

迷う場合は、弁護士や司法書士に、早めにご相談ください。

Q. 相続税がかからなくても、手続きは必要ですか?

A. 相続税の申告が、不要な場合でも、預貯金の名義変更や、不動産の相続登記などの手続きは、必要です。

Q. どの手続きから、始めればよいですか?

A. まずは、遺言書の有無を確認し、相続人と財産の調査を、並行して進めましょう。特に、相続放棄の3か月、準確定申告の4か月、相続税の申告の10か月といった、期限のある手続きを、優先することが大切です。

すべての手続きを、順番に終える必要はなく、並行して進めるものもあります。

せと行政書士事務所ができること

当事務所は、相続手続きの全体の窓口として、戸籍謄本などの必要書類の収集、相続人・相続財産の調査、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約・名義変更などをサポートします。

相続登記は司法書士、相続税の申告や準確定申告は税理士、相続人どうしの争いや、相続放棄の代理は弁護士の業務のため、必要が生じたときは、ご了承をいただいたうえで、連携してご案内します。

まとめ

相続手続きは、遺言書の確認、相続人と財産の調査、遺産分割、名義変更、相続税の申告と、並行しながら進めます。

期限は、相続放棄が3か月、準確定申告が4か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年と、バラバラなので、起算点を確認しながら、優先順位をつけることが、大切です。

次回は、遺言書が見つかったときの、検認の要否と、進め方を解説します。

こんな方は、自己判断で進める前に、ご相談ください

  • 3か月・4か月・10か月の期限が、近づいている方
  • 何から手をつけるか、順番が分からない方
  • 相続人が多い、または遠方で、調整が難しい方

相続手続きの全体像を整理したい方は、初回30分無料でご相談ください

初回相談は30分無料です。
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受付時間 9:00〜17:00(日祝を除く)/大阪市北区西天満(大阪メトロ南森町駅から徒歩5分)

せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之
瀬戸 孝之(せと行政書士事務所 代表)
行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士。銀行・不動産・保険の業界を経て、実務25年。
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執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士)

投稿者プロフィール

瀬戸 孝之
瀬戸 孝之資産トータルアドバイザー
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。