ご家族が亡くなったとき、「口座が凍結されると、葬儀費用や、当面の生活費が引き出せなくなるのでは」と、心配される方は多いです。実際に、亡くなった方の預貯金口座は、一定の時点で、取引が止まります。
ただし、凍結後でも、一定の金額までなら、遺産分割の前に、引き出せる制度があります。この記事では、口座が凍結される時期と、仕組み、使えるお金について、整理します。
この記事は、2026年10月現在の制度にもとづいた、一般的な内容です。取扱いや必要書類は、金融機関によって異なる場合があります。

口座は、いつ凍結されるのか
亡くなった方の口座が凍結されるのは、金融機関が、名義人の死亡を知った時点です。死亡届を役所に出しただけで、自動的に、金融機関へ通知されるわけではありません。
多くの場合は、相続人などが、金融機関に、死亡を連絡したときに、口座が凍結されます。
「凍結される前に、引き出しておいたほうがよいのでは」と、考える方もいますが、相続人全員の同意を得ないまま、引き出すと、あとから、ほかの相続人との間で、トラブルになることがあります。
また、凍結を避ける目的で、金融機関への連絡を、意図的に遅らせることも、おすすめできません。やむを得ず、引き出した場合は、領収書や、出金の記録を、必ず残しておきましょう。
凍結されると、何が起きるのか
- 預金の引き出し、振込、解約などが、できなくなります
- 公共料金、クレジットカード、ローンなどの、自動引き落としが、止まります(引落先の口座を、変更する必要があります)
- 年金が死亡後に振り込まれた場合、受け取りすぎた分は、返還が必要になることがあります。一方、亡くなった月分までの未支給年金は、一定の遺族が請求できる場合があります
- 凍結の解除には、原則として、相続人全員の同意や、遺言書にもとづく手続きが必要です
凍結後でも、お金を用意する方法
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金の払戻し制度(仮払い) | 遺産分割の前でも、各相続人が単独で、一定額まで払戻しを受けられます | 上限があります。払戻しを受けた分は、遺産の一部を、先に受け取ったものとして扱われます |
| 家庭裁判所の保全処分(仮分割の仮処分) | 遺産分割の調停・審判を申し立てたうえで、生活費の支払いや、債務の弁済などのために、預貯金を使う必要があり、ほかの相続人の利益を害さない場合に、預貯金の一部を、先に取得することが認められる場合があります | 一律150万円の上限はありませんが、裁判所の判断が必要で、手続きに時間がかかります。弁護士にご相談ください |
| 受取人が請求する、生命保険金 | 受取人が指定された死亡保険金は、受取人が、自分の権利として請求できます | 保険会社への請求が必要で、支払いまでに、日数がかかります |
| 葬祭費・埋葬料 | 加入していた健康保険から、葬祭費や埋葬料が支給される制度があります | 申請が必要で、金額や条件は、加入先によって異なります |
預貯金の払戻し制度(仮払い)の上限と計算方法
2019年7月から、遺産分割の前でも、各相続人が、単独で、預貯金の一部を、払い戻せる制度があります。払い戻せる金額は、次のとおりです。
- 計算:口座ごと(定期預金は、1口ごと)の、相続開始時の残高の3分の1に、その相続人の法定相続分をかけた額です。基準となるのは、請求した時点の残高ではなく、原則として、亡くなった時点の預貯金の額です
- 上限:各相続人について、同じ金融機関からは、合計で150万円までです。150万円は、必ず受け取れる金額ではなく、あくまで上限です。口座の残高が大きくても、上の計算式で出た額が、150万円より小さければ、その額までしか払い戻せません
例えば、父親が亡くなり、子2人(法定相続分は、各2分の1)が相続人で、A銀行に、普通預金360万円と、定期預金480万円があるとします。
長男が請求できる金額は、普通預金が、360万円×3分の1×2分の1=60万円、定期預金が、480万円×3分の1×2分の1=80万円で、合計140万円です。150万円を超えないため、140万円を払い戻せます。
別のB銀行にも口座がある場合は、B銀行から、別に、150万円を上限として、払い戻せます。
払い戻したお金の使い道に、制限はありません。葬儀費用や、当面の生活費、入院費の精算などに使えます。
必要書類は、金融機関によって異なりますが、一般に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(または、法定相続情報一覧図)、請求する人の印鑑証明書や、本人確認書類などが必要です。
なお、定期預金は、満期前の払戻しの取扱いが、預金商品によって異なるため、金融機関にご確認ください。また、遺言書の内容によっては、この制度を利用できない場合があります。遺言書がある場合は、事前に、金融機関へ確認しましょう。
仮払いを受けるときの注意点
- 払戻しを受けた分は、遺産分割で調整されます。払戻しを受けた相続人が、その分を、先に取得したものとして、扱われます
- 相続放棄を考えているときは、先に専門家へ相談を。故人の預貯金を払い戻して使うと、相続財産を処分したものとして、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。ただし、社会通念上相当な葬儀費用への支出については、単純承認に当たらないと判断された裁判例もあります。判断は個別の事情によるため、相続放棄を考えている場合は、払戻しを受ける前に、専門家へ相談しましょう
- ほかの相続人にも、伝えておく。制度上は、単独で請求できますが、あとからトラブルにならないよう、事前に共有しておくと安心です
- 領収書や、使い道の記録を残す。葬儀費用などに使った場合でも、その費用を、相続人全員で負担することになるとは限りません。のちの精算でトラブルにならないよう、支出の内容を記録し、ほかの相続人とも確認しておきましょう
- 窓口で、正式に請求する。金融機関の窓口で、払戻しの制度を使って請求することと、死亡後に、ATMなどで預金を引き出すことは、別の行為です。必ず、所定の手続きにしたがって、請求しましょう
凍結を解除するには
凍結された口座の解約や払戻しには、金融機関所定の相続手続きが必要です。遺言書がない場合は、遺産分割協議の内容にもとづいて手続きを進めるほか、相続人全員の同意によって、手続きできる場合もあります。
遺言書がある場合は、その内容にしたがって進めます。必要書類や手続きは、金融機関によって異なります。具体的な手続きの流れと、必要書類は、このシリーズの、次回以降の記事で、解説します。
よくあるご相談の例(仮の例)
例えば、一人暮らしの母親が亡くなり、長女が、金融機関に連絡したところ、口座が凍結されたとします。葬儀費用は、いったん、長女が立て替えましたが、母親の口座から、精算したいと考えています。
このようなときは、預貯金の払戻し制度を使えば、葬儀費用の精算に充てられる場合があります。長女は、ほかの相続人にも、状況を伝えたうえで、払戻しの手続きを進めました。
(これは、よくあるご相談を踏まえた仮の例です。実在の特定の方の話ではありません。)
よくある質問
Q. 相続人の一人だけで、払戻しの請求はできますか?
A. できます。預貯金の払戻し制度は、各相続人が、単独で請求できます。ただし、事前に、ほかの相続人にも、伝えておくことをおすすめします。
Q. 金融機関に、連絡をしないでおくとどうなりますか?
A. 金融機関が、死亡を知らない間は、口座が、そのまま動く場合があります。しかし、連絡を遅らせたり、勝手に引き出したりすると、ほかの相続人との間で、トラブルの原因になります。
また、年金の受け取りすぎや、自動引き落としの混乱も、起こりやすくなります。早めに、連絡しましょう。
Q. 預貯金の払戻し制度で、150万円では足りない場合は?
A. 家庭裁判所の保全処分という方法があります。遺産分割の調停・審判が申し立てられている場合に、生活費や相続債務の支払いなどの必要性があり、ほかの相続人の利益を害しないと認められれば、家庭裁判所の判断によって、預貯金の全部または一部を、仮に取得できる制度です。
150万円という一律の上限はありませんが、裁判所の審査が必要で、時間もかかります。必要な金額が大きい場合は、弁護士にご相談ください。
せと行政書士事務所ができること
当事務所は、口座凍結後の、預貯金の払戻しや、解約・名義変更の手続きのために、戸籍謄本などの必要書類の収集、相続人関係図・法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、金融機関への手続きのサポートを行います。
家庭裁判所への申立書類の作成は司法書士や弁護士、裁判所での代理や、相続人どうしの紛争対応は弁護士の業務となります。必要に応じて、ご了承をいただいたうえで、各専門家と連携してご案内します。
まとめ
亡くなった方の口座は、金融機関が死亡を知った時点で、取引が止まります。凍結後でも、預貯金の払戻し制度を使えば、同じ金融機関から、150万円を上限に、遺産分割の前に、払戻しを受けられます。
ただし、払戻しを受けた分は、遺産分割で調整されること、相続放棄を考えている場合は、事前に専門家に相談することに、注意が必要です。次回は、相続人の確定のために必要な、戸籍の集め方と、広域交付制度を解説します。
こんな方は、自己判断で進める前に、ご相談ください
- 葬儀費用や、当面の生活費で、お困りの方
- 預貯金を、すでに引き出してしまった方
- 相続放棄を考えていて、払戻しを受けてよいか迷う方
口座凍結後の手続きでお困りの方は、初回30分無料でご相談ください
初回相談は30分無料です。
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受付時間 9:00〜17:00(日祝を除く)/大阪市北区西天満(大阪メトロ南森町駅から徒歩5分)
執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・1級FP技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士・認知症資産相談士)
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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