家族信託を考えるとき、多くの方が「誰を受託者にするか」に意識を向けます。しかし、その受託者自身が将来、亡くなったり、職務を続けられなくなったりする可能性まで考えている方は多くありません。受託者は財産管理の要となる存在だからこそ、その先まで見据えた設計が必要です。

受託者が欠けるとどうなるか

受託者の任務は、受託者が亡くなったときや、後見開始・保佐開始の審判を受けたときなどに終わります。病気になっただけで法律上当然に終わるわけではありませんが、契約で終了する条件をあらかじめ定めておくこともできます。受託者が欠けたとき、後継受託者が決まっていないと、新しい受託者を選ぶところから始めなければなりません。

新しい受託者は、信託契約に定めがない場合などには、原則として委託者と受益者の合意によって選任します。しかし、親が認知症などで判断能力を失い、合意による選任が難しい場合には、利害関係人の申立てによって地方裁判所に新受託者を選任してもらう方法があります。その場合、時間や費用がかかる可能性があります。さらに、受託者が不在となり、新しい受託者が就任しない状態が1年間続くと、法律上、信託は終了します。せっかく準備した家族信託が、途中で機能しなくなるリスクがあるということです。受託者は子ども世代であることが多く、「親より先に何かあるはずがない」と考えがちですが、病気や事故は誰にでも起こりうるものです。

お金・病気・介護・認知症・相続の不安のイメージ

後継受託者を定めておく重要性

契約書の中に、「最初の受託者が職務を行えなくなった場合、次に誰が受託者になるか」をあらかじめ定めておくことで、信託を途切れさせずに引き継ぐことができます。

  • 受託者の子ども(孫世代)を後継受託者として指定する(未成年者は受託者になれないため、成人していることが前提です)
  • 他のきょうだいを後継受託者として指定する
  • 後継受託者を複数人、順番に指定しておく
  • 後継受託者を今は決められない場合に備えて、誰がどのような方法で後継受託者を選ぶのかを定めておく(例:受益者や信託監督人が指名できるとする方法)。ただし、指名する権限を持つ人が判断できなくなった場合の対応も、あわせて決めておく必要があります
  • 後継受託者がいない場合の対応方針(信託の終了など)もあわせて定めておく

なお、行政書士や司法書士などの専門家を受託者にする場合には、信託業法への注意が必要です。営利目的で反復継続して信託を引き受ける場合、信託業に該当し、原則として免許または登録が必要になります。そのため、家族信託では家族を受託者とし、専門家には信託の設計や契約後のサポートなどを依頼する形がとられます。

家族が公園を歩くイメージ

病気などで職務が難しくなったときの備え

受託者が病気や入院などで職務を続けることが難しくなっても、それだけで法律上当然に任務が終了するわけではありません。受託者の辞任や解任のほか、信託契約であらかじめ定めた事由によって任務を終了させる方法もあります。辞任には原則として委託者と受益者の同意が必要で、親が判断能力を失っていると同意が得られないこともあるため、本人が意思表示できない状況も想定し、どのような場合に交代するのかを契約書で具体的に定めておくことが大切です。

特に、「職務を行えなくなったとき」という曖昧な条項だけでなく、交代の条件をどのように確認するか(たとえば、医師の診断書や、後見開始の審判など)まで検討することをおすすめします。

こんなケースを考えてみましょう

例えば、長男を受託者として家族信託を始めたものの、その長男が病気で急逝してしまったケースを考えてみましょう。契約書に後継受託者として次男が指定されており、次男が就任を承諾すれば、信託を継続することができます。ただし、不動産の登記や信託口口座などについては、所定の手続きが必要です。一方、後継受託者が指定されていない場合は、新しい受託者の選任から検討しなければなりません。

後継受託者を考えるタイミング

信託契約を結ぶ最初の段階で検討しておくのが理想です。受託者自身の年齢や健康状態によっては、後継受託者の存在が特に重要になります。

後継受託者にも役割を理解してもらっておく

後継受託者を指定するだけでなく、その人自身に「自分が後継受託者である」という自覚を持ってもらうことも大切です。後継受託者に指定されても、本人が引き受けを承諾しない場合があるため、候補者を定めるだけでなく、実際に引き受けてもらえるかを事前に確認しておくことが重要です。契約書の存在すら知らないまま名前だけ記載されていると、いざという時にスムーズに引き継げません。定期的な家族の話し合いの場で、後継受託者にも信託の内容を共有しておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. 後継受託者は途中で変更できますか?

A. 可能です。ただし、信託契約の変更条項や法律上の要件に従って手続きを行う必要があります。関係者の判断能力が低下すると変更が難しくなる場合もあるため、早めの検討をおすすめします。

Q. 後継受託者を誰にするか決められない場合はどうすればいいですか?

A. 家族構成や将来的な状況を踏まえ、専門家と相談しながら検討しましょう。現時点で後継受託者を決められない場合でも、将来、誰がどのような方法で後継受託者を選ぶのかを、契約書に定めておく方法があります。

Q. 後継受託者を複数人、順番に指定することはできますか?

A. 可能です。「まず長女、長女が難しい場合は次女」というように、順位をつけて複数人を指定しておく方法もあります。

Q. 後継受託者がいざ引き継ぐ際、何か手続きは必要ですか?

A. 信託財産に不動産がある場合には、受託者の変更に伴う登記手続きが必要です。また、信託口口座についても金融機関所定の変更手続きが必要となります。金融機関によって対応が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。不動産の登記を専門家に依頼する場合は、司法書士などに相談するとよいでしょう。

せと行政書士事務所ができること

最初の受託者だけでなく、その先の後継受託者や、交代する条件まで見据えた設計を一緒に検討し、信託が途切れないようサポートします。

まとめ

家族信託は、最初の受託者を決めるだけでは十分とはいえません。受託者の死亡や判断能力の低下などに備え、後継受託者の指定だけでなく、交代する条件や手続きまで検討しておくことが大切です。信託が将来にわたって円滑に機能するよう、契約を結ぶ段階から、次の担い手についても考えておきましょう。


「相続チェックリスト」を友だち追加特典でプレゼント中

今の準備状況が、チェックするだけでわかります

公式LINEに登録する

執筆者:せと行政書士事務所 代表 瀬戸孝之(行政書士・CFP・FP1級技能士・宅地建物取引士・家族信託専門士)

投稿者プロフィール

瀬戸 孝之
瀬戸 孝之資産トータルアドバイザー
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。