はじめに
人生には予測できない出来事が待ち受けています。大切な家族や自分自身が病気や事故などの不測の事態に見舞われた場合、一体どのように対処すれば良いのでしょうか。そんなとき、知っておきたいのが「任意後見契約」です。この契約は、あなたやあなたの大切な人が突然の状況変化に直面した際に、法的なサポートを提供するものであり、その重要性は決して軽視できません。任意後見契約は、その名の通り、被後見人と後見人が互いに合意の上で取り交わすものであり、法的手続きをスムーズに進めるための道具としての役割を果たします。
例えば、突然の病気などが原因で、認知症を発症し、急に自分の意思を表現できなくなったとした場合、周囲の人々はその人の最善の利益を考えて行動しなければなりません。しかし、法的な手続きや決定を行うには、煩雑な手続きが必要です。事前に任意後見契約を締結していれば、あらかじめ決めた後見人が決められた内容で行動することができるのです。
このコラムでは、任意後見契約の基本的な概念から、具体的な手続きを解説していきます。未来に備える知識を身につけ、身近な人々と共に、安心と準備を整える第一歩としましょう。
任意後見とは
任意後見とは、自身の判断能力が低下する前に、本人と受任者で契約を行います。本人が認知症などで判断能力が衰えた場合、契約で決めた範囲内で受任者が財産管理や法律行為を行うことができる制度です。また受任者の使い込み等を防止するため、家庭裁判所が選任した監督人による監督の下で 行為が行われます。
任意後見契約の種類
将来型
将来に備え、判断能力が十分な時に任意後見契約を行います。その時点では効力は発生しません。
将来判断能力が低下したら、任意後見契約の効力を発生させることができます。
移行型
任意後見契約と同時に財産管理委任契約を行います。
契約後財産の管理だけを委任し、将来判断能力が低下したら、任意後見契約に移行させることができるものです。
即効型
判断能力が低下しつつある本人と任意後見契約を行い、すぐに契約の効力を発生させることができるものです。
任意後見の組織構成
本人
任意後見契約の委任者。 少なくとも契約時に事理弁識能力が不十分な状況に陥っていないことが必要です。
任意後見人(任意後見受任者)
任意後見契約を締結する相手方で、契約の受任者。
任意後見契約が発効すれば、任意後見人として、本人の生活、身上監護や財産管理など、契約で定められた行為を行うことができます。
任意後見監督人
任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所に定期的に報告する任務を負っています。
任意後見契約はこの任意後見人が選任されることで、契約が発効されます。
任意後見契約の流れ
【判断能力低下前】
- 任意後見契約の締結
- 任意後見契約は公正証書で作成しなければなりません。(任意後見契約に関する法律 第3条)
- 任意後見契約の登記
- 公証人による嘱託登記がされます。本人や受任者が登記申請する必要はありません。
この登記がされると、法定後見に優先される契約があることが公証されます。(後見登記に関する法律 第5条)
【判断能力低下後】
- 家庭裁判所への申立
- 本人の判断能力の低下が見られた場合、
本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者が、家庭裁判所に申立をすることができます。(任意後見法第4条)
- 任意後見監督人の選任の審判
- 家庭裁判所は,
任意後見契約の効力を発生させるための任意後見監督人の選任の審判を行います。
- 任意後見監督人の登記
- 家庭裁判所の審判が確定すると、
家庭裁判所の裁判官により任意後見監督人を登記します。(後見登記法第5条6項)
- 任意後見の効力発生
- 裁判所から任意後見監督人が選任された旨の書類(審判書謄本)を、任意後見監督人が受け取ると、
任意後見契約の効力が発生します。
任意後見の開始
終わりに
任意後見契約は、ただ単に法的な手続きの枠組みだけではありません。これは、家族や友人、そしてあなた自身の将来に対する思いやりの表れでもあります。予測不能な出来事に備え、愛情と信頼の築かれた契約は、あなたの人生における大切な安心材料となるはずです。
是非一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
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