― 認知症対策・相続対策として失敗しないために ―
はじめに|不動産を家族信託に入れる前に知っておくべきこと
近年、高齢化社会の進展に伴い、**認知症対策や相続対策として「家族信託」**が注目を集めています。
特に不動産を所有している方にとって、将来の財産管理や相続を円滑に進めるための有効な手段として活用されています。
一方で、不動産を家族信託に組み込む場合には、登記・税金・契約設計など特有の注意点が数多く存在します。
本コラムでは、**「家族信託 × 不動産」**において押さえておくべき重要ポイントを、実務の視点から分かりやすく解説します。

1.家族信託における「不動産」とは
信託できる不動産の種類
家族信託では、以下のような不動産を信託財産とすることが可能です。
- 自宅
- 賃貸アパート・マンション
- 戸建て賃貸
- 駐車場
- 農地・山林 など
家族信託の基本構造
家族信託は、
**委託者(財産を持つ人)**が
**受託者(管理・処分をする人)**に
不動産の管理・処分権限を託し、
**受益者(利益を受ける人)**が賃料などの利益を受け取る仕組みです。
多くの場合、
- 委託者兼受益者:親
- 受託者:子
という形が採られます。
👉 これにより、親が認知症になった後でも、子が不動産の管理・売却を行えるという大きなメリットがあります。
2.不動産を信託する際に必須となる「信託登記」
信託登記は法律上の義務
不動産を家族信託に入れる場合、信託登記は必須です。
信託契約を締結しただけでは足りず、法務局での登記手続きを行わなければなりません。
信託登記には、以下の2つが含まれます。
- 所有権移転登記(委託者 → 受託者)
- 信託登記(当該不動産が信託財産であることの公示)
※所有権は形式的に移りますが、実質的な財産権が受託者に移るわけではありません。
登記に必要な主な書類
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
- 登記済証(権利証)または登記識別情報
- 信託契約書(登記原因証明情報)
- 委託者・受託者の本人確認書類
- 委託者の印鑑証明書(3か月以内)
👉 実務上は、司法書士に依頼するケースがほとんどです。
3.不動産信託にかかる費用と税金の注意点
登録免許税
- 土地:固定資産評価額 × 0.3%
- 建物:固定資産評価額 × 0.4%
【例】
土地3,000万円+建物1,000万円
→ 登録免許税 13万円
その他の主な費用
- 専門家報酬(契約書作成・登記)
- 公正証書作成費用(任意)
税金面での重要ポイント
✔ 委託者=受益者の場合、信託設定時に贈与税は非課税
✔ 不動産取得税も非課税
✔ 固定資産税は形式上は受託者課税(実質負担は受益者)
👉 信託契約書で負担関係を明確にすることが重要です。
4.不動産の種類別|特に注意すべきポイント

自宅不動産の場合
- 売却・建替えの可能性を想定
- 売却権限・建替え権限を契約書に明記
※3,000万円特別控除の適用可否は事前確認必須
「自宅売却時の3,000万円特別控除については、委託者兼受益者が生存中に売却する場合は一定の要件を満たせば適用可能です。ただし、相続後の「空き家の3,000万円特別控除」については、家族信託をした不動産には適用できないという重要な制限がありますので、将来的な売却計画を立てる際には十分な注意が必要です。」
収益不動産の場合
- 賃貸借契約の承継
- 修繕費・管理費の取り扱い
- 家賃収入の管理方法
⚠ 不動産所得の赤字は損益通算不可
(租税特別措置法41条の4の2)
👉 収益不動産の信託は、税務面の慎重な検討が必須です。
共有不動産の場合
- 共有者全員の同意が必要
- 持分のみ信託も可能だが、管理が複雑化
👉 実務上は全体信託が望ましいケースが多いです。
5.受託者選びで失敗しないために
受託者に求められる資質
- 財産管理能力
- 長期的な責任遂行力
- 家族関係への配慮
- 将来の受託者変更も想定できるか
※複数受託者は慎重に検討
受託者の重要な義務
- 分別管理義務
- 家賃等は信託専用口座で管理
6.信託契約書設計で必ず押さえるべき点
売却条項の明記
- 施設費用
- 相続税納税資金
👉 将来の売却を想定するなら必須条項
信託終了後の不動産の帰属
- 残余財産受益者を明確に
- 相続トラブル防止につながる
受益者連続型信託の活用
- 世代を超えた承継設計が可能
- ただし信託期間制限に注意
7.失敗しない家族信託のための実践ポイント
家族間の事前共有が成功のカギ
- 目的
- 内容
- 想定シナリオ
👉 「一部の家族だけで決めない」ことが重要
専門家との連携は必須
家族信託は、
- 法律
- 税務
- 登記
- 不動産実務
が密接に絡みます。
👉 ワンストップで全体を見られる専門家への相談がおすすめです。
定期的な見直しを忘れずに
- 家族構成の変化
- 法改正
- 税制改正
👉 作って終わりではない制度です。
まとめ|家族信託は「設計」で結果が決まる
家族信託で不動産を扱う際には、
- 登記
- 費用・税金
- 不動産の種類
- 受託者選定
- 契約書設計
といった多くの注意点があります。
しかし、正しく設計すれば、
認知症対策・相続対策として非常に強力な制度となります。
「家族のための制度」であることを忘れず、
将来にわたって安心できる仕組みを整えることが何より重要です。

家族信託・不動産のご相談は
せと行政書士事務所までお気軽にご相談ください。
📞 06-4400-3365
ご家族の状況に合わせた、実務に強い家族信託設計をご提案します。
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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