―「想定外」では済まされない介護費用の現実―
親が倒れた。認知症の症状が進んできた。
突然訪れる介護の現実に、多くの家族は戸惑います。しかし、それ以上に深刻なのが経済的な負担です。
「介護にはどれくらいお金がかかるのか」
――この問いに明確に答えられる人は、決して多くありません。
介護費用は、要介護度、介護の場所、利用するサービスによって大きく異なります。
本記事では、厚生労働省の公的統計データに基づき、介護費用の実態をわかりやすく解説します。

介護費用の全体像
受給者1人当たり月額20.6万円という現実
厚生労働省が2025年に公表した「令和6年度介護給付費等実態統計」によると、2025年4月審査分における受給者1人当たり費用額は、介護サービスで20万6,300円、介護予防サービスで2万8,200円となっています。
この20.6万円という数字は、介護保険サービスにかかる費用の総額であり、保険給付額と利用者の自己負担額を合わせた金額です。
実際に利用者が支払うのは、この費用額の1割〜3割(所得に応じて異なります)です。
仮に
- 1割負担:月額約2.1万円
- 2割負担:月額約4.1万円
- 3割負担:月額約6.2万円
となります。
ただし、これは介護保険サービスの自己負担のみであり、おむつ代や医療費、その他の生活費は含まれていません。
なお、令和6年度(2024年度)の介護費用総額は11兆9,381億円に達し、過去最高を更新しています。前年度より4,242億円(3.7%)増加しており、今後もこの傾向は続くと見込まれています。
在宅介護と施設介護
費用はどう違うのか
介護費用を考える上で最も重要なのが、
**「在宅で介護するか、施設に入所するか」**という選択です。
在宅介護の場合
在宅介護では、訪問介護、デイサービス(通所介護)、福祉用具貸与などを組み合わせて利用します。
主なサービスの月額費用の目安は以下のとおりです。
- 訪問介護:約10万円
- 通所介護:約11万円
- 福祉用具貸与:約3万円
これらを組み合わせると、要介護度にもよりますが、月額15万円〜25万円程度になります。
1割負担であれば自己負担は1.5万円〜2.5万円ですが、介護保険外サービスやおむつ代などを加えると、実質的な月額負担は3万円〜5万円程度になることが多く見られます。
施設介護の場合
施設サービスは、在宅介護よりも費用が高額になる傾向があります。
- 特別養護老人ホーム(特養):月額約33万円
- 介護老人保健施設(老健):月額約26万円
- 介護医療院:月額約28万円
これらの費用には、介護サービス費に加えて居住費と食費が含まれます。
1割負担の場合でも、月額の自己負担は10万円〜15万円程度になるのが一般的です。
ただし、住民税非課税世帯など所得が低い場合は、「負担限度額認定」により居住費・食費が大幅に軽減される制度があります。
要介護度別の費用負担
「軽度」でも月1万円以上かかる
厚生労働省のデータによると、要介護度が上がるほど、自己負担額も増加します。
在宅サービス中心の場合の平均的な自己負担額は次のとおりです。
- 要支援1:月約0.2万円
- 要支援2:月約0.3万円
- 要介護1:月約1.1万円
- 要介護2:月約1.5万円
- 要介護3:月約2.3万円
- 要介護4:月約2.8万円
- 要介護5:月約3.2万円
施設サービスを利用する場合は、要介護3以上で月約3万円、要介護5では月約3.4万円程度となります。
いずれも介護保険サービスの自己負担のみであり、実際にはこれに別の費用が加わります。
介護保険サービスの自己負担割合
1割・2割・3割の境界線
介護保険サービスの自己負担割合は、所得により決まります。
- 1割負担:年金収入等の合計が280万円未満
- 2割負担:280万円以上340万円未満
- 3割負担:340万円以上
現在は1割負担の人が大多数ですが、2026年度以降、2割負担の対象拡大が検討されています。
仮に月20万円分のサービスを利用している場合、自己負担は月2万円→4万円へ倍増します。
在宅介護の具体例
要介護2・月額費用のイメージ
要介護2の場合、月約19.7万円分までサービスを利用できます。
一例として
- 訪問介護:自己負担 約5,000円〜7,000円
- デイサービス:自己負担 約8,000円〜1万円
- 福祉用具レンタル:自己負担 約1,000円〜3,000円
介護保険の自己負担合計は約1.5万円〜2万円です。
これに加えて、
- おむつ代
- 医療費
- 日用品・通信費
などが発生し、月額総負担は3万円〜5万円程度となるケースが一般的です。
介護保険対象外の費用
見落とされがちな盲点
介護費用で見落とされがちなのが、介護保険対象外の支出です。
- おむつ代:月6,000円〜3万円
- 医療費:月数千円〜数万円
- 理美容・日用品・通信費など
合計すると、月1万円〜3万円、場合によっては5万円以上になることもあります。
費用負担を軽減する公的制度
高額介護サービス費制度
自己負担が一定額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
負担限度額認定制度
施設入所時の居住費・食費を軽減できる制度です。
医療費控除
対象となる介護サービス費は、確定申告で控除を受けられます。
介護離職という「見えない損失」
介護を理由に、年間約10万人が離職しています。
40代〜50代で退職すると、将来の収入・年金にも大きな影響が及びます。
2026年以降の制度改正
負担増の可能性
- 2割負担の対象拡大
- ケアプラン有料化
- 多床室の室料負担
などが検討されています。
まとめ
介護費用に備えるために
介護費用は、
- 在宅:月3万円〜7万円
- 施設:月10万円〜15万円以上
が現実的な目安です。
「知らなかった」「想定外だった」では済まされません。
今こそ、現実を直視し、早めの準備を始めることが大切です。
投稿者プロフィール

- 資産トータルアドバイザー
-
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、年金総合診断士、家族信託専門士、相続対策コンサルタントを保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。
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