―― 感情に寄り添い、現実で決めるための実務整理 ――

実家の扱いは、感情と現実が正面衝突しやすいテーマです。
思い出が詰まった家ほど「残したい」と感じる一方、放置すれば老朽化・近隣トラブル・税負担が静かに積み上がります。

実際、日本の空き家は増え続け、
2023年時点で空き家は約900万戸、空き家率は13.8%(過去最高)
と公表されています(総務省統計)。

本コラムでは、
👉 気持ちに寄り添いながらも「最終的に判断できる」こと
を目的に、官公庁が公表している情報の範囲で基準を整理します。


1.最初に押さえる「3つの軸」

―― 時間・お金・リスク ――

実家の選択肢は
「売る」「貸す」「残す(維持・利用)」
の3つですが、どれを選んでも、次の3軸は避けて通れません。


【軸①】時間

管理できる“距離と頻度”か?

実家が遠方で、月1回も見に行けない場合、
🟡 「残す」難易度は一気に上がります。

家は、人が住まない期間が長いほど

  • 不具合が見つかりにくい
  • 傷みが進みやすい

とされており、国土交通省資料でも

空き家の放置により
・樹木の越境
・倒壊の危険
・害獣・ごみ問題
が生じ得ると示されています。


【軸②】お金

見落とされがちな“維持コスト”

実家には、住んでいなくても次の費用がかかります。

  • 固定資産税
  • 火災保険
  • 光熱費の基本料金
  • 修繕・管理費

さらに
🟡 売る場合:仲介手数料など
🟡 貸す場合:リフォーム費・募集費・管理委託費

賃貸した場合の収入は
**「不動産所得」**として扱われ、

総収入金額 - 必要経費
で計算することが国税庁により整理されています。


【軸③】リスク

最大の盲点は「名義・権利」

相続で取得した不動産は、
📌 相続登記の申請が義務化されています。

名義が整っていないと、

  • 売れない
  • 貸せない
  • 修繕契約も進まない

という“詰まり”が起こります。
**判断のスタートラインは「権利関係の確定」**です。


2.「売る」判断が強いケース

―― 管理負担を「資産」に替える ――

2-1.売却が向く典型パターン

次の条件が重なるほど、
🟡 「売る」選択が合理的になります。

  • 今後住む予定がない
  • 相続人間で使い道が合意できない
  • 遠方で管理が難しい
  • 建物が古く、貸すほどの採算が見込めない
  • 現金化して相続を整理したい(分けやすさ重視)

相続空き家の売却には「期限付き特例」がある

相続した空き家を一定期間内に譲渡すると、
譲渡所得から最大3,000万円(条件により2,000万円)
を控除できる特例があります。

ただし、

  • 期限
  • 建物の築年条件
  • 手続要件

を満たす必要があり、
👉 「いずれ売るなら早めに検討」が重要です。


2-2.税金で損しないためのチェックポイント

売却時の譲渡所得は、
売値ではなく「取得費」がカギになります。

さらに、相続税を納めている場合、
一定要件のもとで
🟡 相続税額の一部を取得費に加算できる特例
もあります。

👉 「売ったらいくら残るか」は、税務処理で大きく変わる
という点が重要です。


3.「貸す」判断が強いケース

―― 家を“収益資産”に変える ――

3-1.貸す価値が出る条件

賃貸は「中間的選択」に見えますが、
実態は“事業”に近い判断です。

向いているのは次のようなケースです。

  • 立地に賃貸需要がある
  • 建物状態が比較的良い
  • 改修で競争力が上がる
  • 将来家族が戻る可能性がある
  • 管理会社に委託する意思と予算がある

賃貸収入は不動産所得となり、
🟡 申告・記帳・領収書管理が前提になります。


3-2.原状回復トラブルを防ぐ考え方

国土交通省のガイドラインでは、
原状回復=借主の故意・過失等による損耗の復旧
と定義されています。

🚫「借りた当時の状態に戻す」ことではありません。

入居時の状態確認と契約条件の明確化が、
貸主の時間的・精神的コストを大きく減らします。


4.「残す」判断が強いケース

―― 家族・生活・地域の拠点として ――

4-1.「残す」は放置ではない

残す選択は、
「守る」「活かす」決断です。

ただし、空き家の長期放置は
公的資料でも問題が生じ得るとされています。

🟡 残すなら必須

  • 定期点検
  • 通気・清掃
  • 管理役割の明確化

4-2.名義を整えないと「残せない」

どの選択肢でも共通なのが
相続登記の完了です。

名義が曖昧なままでは、
結果的に「放置」へ滑りやすくなります。


5.まとめ/迷ったときの決定フローチェック(実務版)

① 住む予定があるか?
→ ある →「残す」寄り(まず名義整理)

② 貸せる状態か?
→ 管理・改修・契約運用ができる →「貸す」

③ それ以外
→ 原則「売る」を中心に検討
※ 特例は期限があり、先送り=損失になり得ます


参考(公的出典)

  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
  • 法務省「相続登記の申請義務化」
  • 国税庁 各種タックスアンサー
  • 国土交通省 原状回復ガイドライン ほか

ご相談は「せと行政書士事務所(大阪市北区)」へ

―― 法律と不動産、両方を“現実的に”見られる相談先 ――

実家を
「売る・貸す・残す」
どの選択にするかは、単なる不動産の話でも、単なる相続手続きの話でもありません。

名義・相続・税務・管理・将来の暮らし――
これらが**絡み合った“生活の問題”**だからこそ、
一部だけを見る判断は、あとで行き詰まりやすくなります。

せと行政書士事務所では、
行政書士としての相続・契約・名義整理の実務に加え、
宅地建物取引業者として
**「シニアサポート不動産」**の屋号で、不動産の現場にも関わっています。

そのため、

  • ✔ 相続登記・権利関係を整理したうえで
  • ✔ 売却・賃貸・保有、それぞれの現実的な選択肢を整理し
  • ✔ 「今だけでなく、数年後に困らないか」という視点で

一体的に検討できることが、弊所の特長です。

「とりあえず残すつもりだったが、このままで大丈夫か不安」
「売るべきか、貸すべきか、判断材料が足りない」
「家族の意見が分かれていて、整理役がほしい」

こうした段階でも、問題ありません。
**無理に方向性を決める前の“整理相談”**としてご活用ください。

実家の扱いは、
早く決めることよりも、
間違えずに決めることが何より重要です。


相続・名義・売却・賃貸まで一体で。
行政書士 × 宅建業だからできる、実家の整理相談。

投稿者プロフィール

瀬戸 孝之
瀬戸 孝之資産トータルアドバイザー
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、家族信託専門士、一種外務員を保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。