高齢の売主が関わる不動産売買では、
「この契約、本当に成立して大丈夫なのか」
という不安がつきまといます。

不動産価格や条件が整っていても、
売主の判断能力に問題があれば、
その売買契約自体が後から争いの対象になる可能性があります。

本記事では、
**認知症が疑われる売主が関与する不動産売買において、
行政書士が「できること」と「できないこと」**を、
実務目線で整理します。


不動産売買で問題になる「判断能力」とは

不動産売買は、
売主の人生や資産に大きな影響を与える重要な法律行為です。

そのため、民法上、
売主には次のような能力が求められます。

✔ 契約内容を理解できること
✔ 売却の意味や結果を判断できること
✔ 自分の意思で決断していること

重要なのは、
「認知症と診断されているかどうか」ではありません。

問題になるのは、
👉 契約時点で意思能力があるかどうか
この一点です。


見た目では分からない判断能力のリスク

実務では、次のようなケースがよく見られます。

  • 日常会話は問題なく成立している
  • 昔の話ははっきり覚えている
  • 受け答えも一見しっかりしている

それでも、

  • 契約内容の説明を理解できていない
  • 同じ質問を何度も繰り返す
  • 売却理由を自分の言葉で説明できない

といった状態であれば、
売買契約の有効性が後から問題になる可能性があります。


行政書士が最初にできる対応とは

行政書士は医師ではありません。
そのため、

  • 認知症の診断
  • 判断能力の有無の断定

を行うことはできません。

しかし、行政書士には
法的リスクを事前に整理する役割があります。

具体的には、次のような対応が可能です。

● 売主本人への丁寧な意思確認

売却理由・条件・希望について、
本人の言葉で説明できるかを確認します。

● 契約内容の理解度の確認

売却価格や引渡時期などについて、
どこまで理解しているかを慎重に確認します。

● 家族関係・支援体制の整理

誰が関与しているのか、
家族間で合意は取れているのかを整理します。

● 将来リスクの洗い出し

この売買が、
後から無効・取消しを主張される可能性がないか
という観点で検討します。


行政書士が「立ち止まるべき」と考えるサイン

次のような状況が見られる場合、
行政書士としては慎重な判断が必要だと考えます。

  • 売主本人よりも家族が話を主導している
  • 本人が売却の理由を理解していない
  • 「とにかく早く売ってほしい」と周囲が急がせている
  • 説明内容をすぐに忘れてしまう

これらは、
後から契約トラブルに発展しやすい典型例です。


行政書士が「できないこと」も明確にしておく

業際の観点から、
行政書士にはできないこともあります。

✖ 売買契約の代理締結
✖ 判断能力の最終的な法的判断
✖ 紛争発生後の代理交渉・訴訟対応

これらは、
司法書士・弁護士・医師など、
それぞれの専門家が担う領域です。


行政書士が「できること」は事前整理

一方で、行政書士が最も力を発揮するのは
**「売買の前段階」**です。

● 任意後見契約の検討

将来に備えて、
判断能力が低下した場合の支援体制を整えます。

● 財産管理委任契約の設計

売却準備や資産管理を、
法的に整理した形で進めることができます。

● 遺言書作成の支援

売却後の資産承継まで見据えた整理が可能です。

● 他士業との連携調整

司法書士・不動産業者・医師などとの
役割分担を明確にする橋渡し役を担います。


「売買を止める専門家」ではありません

行政書士が関与すると、
「話が止まるのではないか」と思われがちです。

しかし実際には逆です。

✔ 後から止まらないために、先に整える
これが行政書士の役割です。

判断能力がしっかりしているうちであれば、
選択肢は多く残されています。


まとめ|認知症リスクは売買前に整理する

認知症が疑われる売主が関与する不動産売買では、
価格や条件以上に、
**「法的に進めてよい状態か」**の確認が重要です。

行政書士は、
不動産取引と法律の間にある
見落とされやすいリスクを整理する専門家です。

売買を安全に、そして円滑に進めるためにも、
早い段階での相談が、結果的に近道になります。


ご相談について

不動産売買にあたり、
「この状態で進めて本当に大丈夫なのか」と感じたときは、
一度立ち止まって整理することが重要です。

せと行政書士事務所(大阪市北区)では、
高齢者・相続・不動産を一体で考えたサポートを行っています。

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せと行政書士事務所
TEL:06-4400-3365
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投稿者プロフィール

瀬戸 孝之
瀬戸 孝之資産トータルアドバイザー
せと行政書士事務所、代表。
行政書士、CFP、FP 1級技能士、宅地建物取引士、年金総合診断士、家族信託専門士、相続対策コンサルタントを保有。シニア世代の悩みをワンストップで解決する事務所として、FP、不動産売買、終活、相続対策など、トータルサポートを提供している。